▼山に登るホリエモン2006/05/04 19:04 (C) おさむ茶マイルーム
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「沈まぬ太陽」は全5巻からなるこブログの読書感想文でも以前述べたが、ストーリーは国民航空社員で同社の労働組合委員長を務めた主人公、恩地元(実在のJAL元社員らしい)が受けた不条理な内情を描き、史上最悪の死者を出した日航機墜落事故をテーマに、人の生命に直結する航空会社の社会倫理を鋭く抉り出した作品としての評価がある。実はワタクシも主人公同様、20数年前市役所の労働組合委員長を務め、爾来ひたすら冷や飯組一直線の身にあるだけに体験的にオーバーラップする部分もあって、感情移入しながら読んだものである。
1・2巻がアフリカ篇、3巻が御巣鷹山篇、4・5巻が会長室篇である。エリートコースまっしぐらだった恩地が、組合の委員長を引き受けたのが人生の分かれ目で、結局海外へ飛ばされてしまい、流れ着いたところがケニアのナイロビ。10年間の流浪の日々を描いたのがアフリカ篇である。(まったくオレと同じやんけw)
御巣鷹山篇は、絶望の巻である。読みながら、ボイスレコーダーに録音された機長の声を思い出していた。それに遺族の遺骸へのこだわりも尋常ではない。それに対応する主人公の切なさと葛藤、そして織り成す微妙な人間模様は、とても映画では表現できないのも無理かも。(ベストセラーしたことから映画化も検討するも、断念したとか)
4巻目は一転して企業小説となり、5巻目で政治小説へと変貌する。仮名で登場する政治家たちの描写から、ほぼ「は〜ん、あの議員か」と特定できる楽しみもある。最後まで読みきるのは疲れるが、腐敗を暴くという作者の想いが最後まで引っ張ってくれる。絶望の真っ只中にあるホリエモンがこの本から何をつかみ、山へ登ろうとしたのか、けだしその思いのたけを聞きたいものである。