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▼本法人を解散致します

特定非営利活動法人 長井まちづくりNPOセンターの解散に臨んで
                            ー解散の趣旨と今後についてー

 我々は「市民活動の豊かで健全な発展」と、「「歴史・文化・自然ー水・緑・花ー」など地域資源を活かした市民主体のまちづくり」を実現するため、特定非営利活動法人長井まちづくりNPOセンター(以下、当法人)を2004年に設立し、以来、18年にわたって活動してきた。
 一般にまちの賑わいを作り出す上でのキーワードとして、「モノ・ヒト・コト」が良く取り上げられるが、当法人は実に多くのモノ・ヒト・コトと積極的に関わり、様々な取り組みを行ってきた。モノである建物やまちを舞台に、多くのヒトビトの協力を得て、コトとして地域活性化イベントを開催したのはその一例である。そして、その中からいくつか定着してきたものがある。
 神奈川大学故西和夫先生の研究室と合同で始めたまちなかの歴史的建造物調査は、長井市を中心に、川西町、南陽市にも対象範囲を広げ、6年間で50件130棟の建造物について歴史的な価値を明らかにした。その中から長井としては初めて建物を有形文化財建造物として登録することが出来た。この歴史的な建物を登録文化財にするという取り組みは現在もしっかりと継承されている。また、この登録調査で得た建物の基本的情報や、所有者との繋がりが、後の重要文化的景観選定にも大いに貢献した。さらに西先生のご尽力により設立された「神奈川大学 長井 まちづくり研究所」は、市民を対象としたまちづくり学校を開催する原動力となった。西先生のお力なくして、当地の歴史的建造物の保存活用は実現出来なかったであろう。
 この建物調査の成果も活用しながら、まちなかの小道や水路を巡るまちあるきも年に複数回開催されるようになり、県外からのリピーターが訪れるなど、「アルクセッション」という名称とともに長井の名物として定着した。今でこそ地図を片手に歩く人を良くみかけるようになったが、まちあるきを始めた当初は地域住民に珍しがられたものである。
 毎年クリスマス恒例のトナカイ急便は、特に小さな子どもたちに心から喜んでもらえる行事として保護者の評判も年々高くなっており、年末の風物詩としてすっかり定着している。サンタがプレゼントを持って自宅にやってくるという、楽しくも非現実的で不思議な経験がここに住む子どもたちの心に刻まれることで、この土地の暖かな記憶として長く残っていくことを期待したい。
 この他にも様々な取り組みを行ってきたが、何れにせよたくさんの方々と密接なつながりを持てたことが当法人として一番の財産になったといえる。定着した実績は、今後も更なる形で展開していくであろう。
 このように、埋もれていた地域資源を掘り起こし、多くの方々に再認識頂き、また、市民と一緒に活動しつつ、まちづくりに関心を抱く新たな人材を育てることが出来た。一方、地域コミュニティセンター等、法人発足当時には存在しなかった安定的な市民主体の組織がいくつも誕生して来ている。当法人の当初の目的は充分達成したと言える。民間・大学等研究機関・行政などと連携して様々なことが行えたのは、法人としての位置づけがあったからこそであり、法人なくしてこれらの活動は遂行出来なかった。その意味で、このような仕組みに感謝したいと思う。充実した18年の活動が出来たことを満足に思いながら我々は解散を決意するに至った。
 しかして、当地のまちづくりは今後、安泰なのであろうか。
 答えは否である。
 様々な問題の一つとして、地域において居住人口が減少していることが挙げられる。特にまちなかから子ども達の姿が見かけられなくなり、地域行事からにぎやかさが失われつつあり、行事自体満足に行えないようになってきている。この土地の次世代への継承が危ぶまれる大問題である。空き家・空き店舗が目立ち始めているのも根幹は同じだ。これらは全国的な問題であり、当地のみでの抜本的な解決は容易ではない。しかし、当法人の一員として活動してきた我々は、この状況を等閑視することは出来ない。
 今ここで具体策を提示することは難しい。ただ、一つの方向性として、次の様なことは言えるのではないだろうか。法人代表の立場でこれに触れて結びとしたい。
 ヒトの生活にはハレとケがある。従前、当法人はどちらかというとハレの舞台を作り出してこれをヒトビトと共に活動しながら互いに享受することに力を入れてきた。しかし、ハレばかりでは長続きはしない。かといって、毎日がケの連続では、住んでいることが惰性となり、心の動きがない日々となる。ハレとまでは行かなくとも、ケの中にほんの少しだけ心を動かすようなコトを加えて、この地に住んでいるからこそ日常の中にもちょっとした感慨が得られる、そんな穏やかな流れを作り出せないだろうか。もちろん本格的なハレには祭りなどがあるが、そうではなくて、もう少し日常の範囲でヒトビトがこの場所をちょっとだけ自慢したくなる、市外の友人をお茶飲みに誘いたくなるような、そのようなまちは目指せないか。ヒトビトがここに住み続けたいという心持ちを抱く、まずその雰囲気を醸成したい。大きな予算がなくても、少しの工夫で自分たちのまちを楽しくする。大がかりでなくても出来ることは色々ある筈だ。これを続けることで、次の世代の子ども達へこの地を受け渡していく下地を作りたい。そして、そのためには、当然、ここに住むヒトビト自身がこのまちの”日常に”魅力を感じるようでなければならない。簡単なようでいて難しい。ではどうすれば良いのであろうか。
 この課題に対して少しでも先が見えるような流れを生み出すこと、これが特定非営利活動法人長井まちづくりNPOセンターに関わった我々が今後なすべきことであろう。我々一人ひとりは今まで以上に地域と一体化しつつ、住民自身が自ら工夫し、行動するまちづくりが実現できるような緩やかな流れを作りだして行かねばならない。
 その想いを頂きつつ、解散後の一歩を踏み出して行きたい。

 18年の長きにわたり、お力添えを頂いた諸団体および関係機関、そして活動の原動力となって頂いた会員各位に深甚の謝意を表する。

                                            令和4年1月9日

                           特定非営利活動法人 長井まちづくりNPOセンター
                                           代表理事 小幡知之
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