▼長野県塩尻市で講演して参りました。2005/03/17 09:00 (C) 観光農業のカリスマ 工藤順一
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▼長野県塩尻市で講演して参りました。2005/03/17 09:00 (C) 観光農業のカリスマ 工藤順一
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平成17年3月15日(火)、長野県塩尻市文化会館において講演を行いました。
「塩尻市考える農業学習塾20周年記念公開講座」での講師として招請いただいたもので、当日は「塩尻の農業、観光を斬る!〜元氣と氣力で未来を変える〜」と題してお話しして参りました。
長野県塩尻市は人口6万5千人(平成16年)、ワインとレタスのまちであり、善光寺街道(参拝の道)、三州街道(庶民の道)、中山道(女の道)の分岐点として、郷原の宿、洗馬宿、本山宿、塩尻宿で栄えたまちです。長野県のほぼ中央に位置し、松本市に隣接しています。
日本一住みやすいとして、ゴミや空き缶が捨てられていないクリーンなまちづくりを展開しております。また、いま話題の花粉症がないという、羨ましい土地であります。周辺の山々には杉があまりなく、カラマツ・アカマツ・ミズナラが植林されており、近くに大手企業も点在し、のどかで暮らしやすいとの評価が高いところです。洗馬(せば)のレタスは関西・名古屋のブランドとして高価で取引きされていて、農業においても努力されている土地とお見受けしました。
講演に先立ち前日入りして、街中を散策し地域住民(農家・観光案内所・道の駅・農産物直売所・売店などで)とコミュニケーションを図ったところ、以下のような点が印象に残りました。
1)行政を信頼し、何一つ不満がない
2)住民として環境もよく住みやすい。
3)外部からくる方々は、皆さん空気が美味いと言っている。
4)農家はJAを信頼し、系統販売が実に98%以上。レタスは栽培面積の大小や専業・兼業に関わらずその質の良さで定評があるということから高値安定型。営農指導・販売に努力されていることが伺いとれる。
5)花粉症やぜんそくで困っている人があまりいない
6)観光では、ワイン、レタス、秋のぶどうやりんご狩りで客が訪れる。
7)東京からの宿泊、ビジネスは日帰りが多く、宿泊の場合には隣の松本市を利用する。
8)宿泊、観光客の大半は、名古屋、大阪といった身近な都市から来る。
9)観光資源としては、高原や湖(ヘラブナ釣り)といった自然
→ 高ボッチ高原(牛)、みどり湖、鉢伏山、高原植物、水芭蕉、紅葉など
10)塩尻市内の観光としては、ワイン、ぶどう、りんご、なしが美味しく、ワイナリーは市内に大手8社。
実際に散策した私の感想としては、塩尻市も他のまちと同様に中心商店街は空き店舗が目立ち空洞化が進み、行政は郊外型大型店舗を誘致しておりました。お客様を迎える意味で入り口としての拠点である道の駅も、階段がありバリアフリー構造になっていませんでした。施設からトイレまでの距離があるために、施設内にあるせっかくの情報や土産物が活かされていないことが残念です。
今回の講演会は、塩尻市考える農業学習塾の20周年を記念しての公開講座ということで、約200名の方々にお集まり頂きました。講演前の塾生発表では、村芝居「おちない林檎」も披露され大いに盛り上がりました。
前日のまち中散策をした上で、私は次のようなお話をしております。
●住みやすいまちとしては群を抜いているものの、観光客や宿泊といった滞在者が少なく通過型になっている状況
→ 案内板、標識が少ない
●行政指導で人づくり、まちづくりに努力している
→ 自立、自活が欠けている
●行政の縦割り機構が強いため、民間の異業種ネットワーク構築が必要
→ 情報は風通しよく
●市民は恵まれた生活環境に慣れ、次世代に向けた発想の転換がなされていない
●塩尻=○○といった名物(食)がない
●パンフレットに記載されているイベントが短期間のもので、継続的な取り組みがなされていない。
●観光ぶどう園〜ワイナリーといった結びつきによる購買力はあるものの、売店(飲食店)の購買力がいまひとつ。
●まち全体に活性化に対する意欲が欠けている。
●地域資源の再発見、再認識が必要。恵まれすぎているからか、悩み苦しみから遠ざけてしまっている。(面倒なことに頭・金・時間を費やしたくない)
つまり、私が提唱している「元氣なところにはドラマがある。ドラマのあるところには人が集まる。人の集まるところには現金が使われる。そして地域は活性化していく。」の理屈どおり、ドラマ(ドラマを彩る要素としては、愛、命、思い、笑い、ロマン、温もり、苦労、汗、涙などなど)を生むためには、地域住民の未来に対する思いや夢があってこそ、その地域は輝き人が集まると思うのです。それには、官民一体となってまちをどのようにしたいかの十分な話し合いが必要です。JAや商工会、観光協会はその指導的役割を担い、リーディングしていく必要があります。
また、お客様と直接会う売店の人々に求められているのは、笑顔、感謝、思いやり、温もりであり、商売を笑売→勝売にすることが大切です。さらには、消費者との交流を活発にし、そこに食農育を盛り込み、本物、季節感、安全、安心を、体験、体感、実感させることが重要です。
農産物直売所もしかりで、地産地消の推進役として大きな役割を果たすところだと思っています。新鮮で美味しい、そして作る人の顔が見える、そんな安心感が付加価値となると思います。そして生産者と消費者の交流の場を設け、塩尻の農業に対する考え方に大いにアピールし理解を得ることに努めて頂きたいと考えます。
是非、この機会に申し上げたいのが「過去と他人は変えることが出来ないが、自分を変えることで未来を変えることはできる」ということです。これまで農業学習塾で学ばれた皆さんがやらなければ塩尻は変わらないのです。それには、行政・JA・各関係機関の皆さんが一丸となって取り組み、支援・応援をして頂きたい。やっかみやねたみ、逆恨みといった様々な障害物からやる気のある方々を守る楯になって頂きたいと思います。
そして、また既成概念・固定観念を取り除き、意識改革を図って新しい発想の転換を心がけて頂きたいと思います。
毎回お話していることですが、「信頼の積み重ねが信用」です。一朝一夕に信用が生まれるわけではありませんが、出来るところから取り組んで貰いたいと思います。人を動かすのは人の熱意や情熱です。血の通っているもの、人間の感情という温みです。
「農業は無限の観光資源である。石ころでも、雑草でも、雪でも、総てが観光資源になる。」これはどこの地域でもいえることで、長野は信州そばが有名でそば切りの発祥の地でありながら、そば屋ののぼりもない。他から来た人はどこにお店があるのかも分からない。私が寒河江を売ったときもそうでしたが、寒河江を売るならば、まずは山形県を売らなければならなかったのです。東北を売らなければならなかったのです。そういった経験から、「長野=そば」という他から来た方のイメージを大切にして、山形のような全県レベルでの蕎麦街道をつくるなど他の地域との連携を図ることが重要と提案して参りました。
智慧をつかって、通過型にならないような施策を是非考えて頂きたいところです。
以上、講演で話した内容を一部ご紹介しました。
講演終了後、よさこいソーランが披露されました。大変勇壮で締めにふさわしいダイナミックな踊りでした。1ヶ月間の練習の成果が存分に発揮なされたと思います。見ている私も胸熱く感動いたしました。