▼紙上のスフィンクス2007/09/19 22:52 (C) 美術館大学構想
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■写真上:先週刷り上がったばかりの立花文穂さんデザインによる『舟越桂 自分の顔に語る/他人の顔に聴く』展ポスター。田宮印刷株式会社(山形市)に協力を依頼し、インクの盛りや印刷用紙の微妙なニュアンスにこだわったりと、職人的な試行錯誤を繰り返しながら、立花さんのタイポグラフィーと舟越作品が見事に融合しました。お2人のコラボレーションともいえるポスターです。
■写真中:舟越桂さんの世田谷のアトリエにて。ポスターの素材として立花さんが自ら撮影したアトリエの写真に見入る舟越桂さん(左)。
■写真下:本展出品作の1つ、『水に映る月蝕』とポスターのラフを並べて。
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先月末、夕方の小田急線某駅で、出品作家である舟越さんに展覧会ポスターのラフを確認してもらうため、デザインをお願いしていた立花文穂さんを待ち合わせしました。
アトリエに行く約束の時間の少し前に落ち合い、「いざ、作戦会議」と駅前のドトールで立花さんにポスターラフをはじめて見せてもらったとき… 僕は一瞬、言葉を失ってしまいました。
展覧会のビジュアルとしてはタブーともいえる、作品の、特に「顔」の上に文字が入るレイアウト。
紙面の中央に据えられている最新作の頭部は、眼球(大理石製)がまだ制作途中で、舟越作品に共通する内相的な眼差しに、まだ光は宿っていません。
けれども、微動だにしない彫刻作品の「静」のイメージが良い意味で崩され、秀逸な文字の配置によって、彫刻の肌理で、紙の表層で、何かが起こっている。あるいは、演劇かオペラのビジュアルのように、「其処で、何かが生まれつつある予感」が濃密に発散していました。
これまでは、まるで独立した人間のように、見る者の前で厳かに、無言で屹立していた舟越さんの彫刻が、立花さんの非凡なアートディレクションによって、生々しく唇を動かし、語りかけてくるのを感じました。
担当学芸員として、様々な想像や不安が脳裏を駆けめぐりました。でもけっきょく僕は「これはすごいです。 立花さん」と心から感嘆していました。もちろん、舟越さん本人も立花さんの真正面からのチャレンジを歓迎してくださいました。
最近日本各地を巡回した大規模な回顧展で、作品の「変貌」ぶりが話題となった舟越さん。
きっとこのポスターを見た多くの人が、『自分の顔を語る/他人の顔を聴く』という謎めいたコピーとともに、舟越さんが最近のテーマとしている「スフィンクス」の表象との問答を通して、彫刻家に変貌をもたらしたものの突端に触れることでしょう。
そしてその答えは、山形に展示される11体の彫像と対峙する観客ひとりひとりの心象のうちに明らかになるのです。
10月12日、皆さんぜひ山形へいらしてください。
宮本武典/美術館大学構想室学芸員
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『舟越桂 自分の顔に語る/他人の顔に聴く』
会期=2007年10月12日[金]〜11月9日[金] 10:00〜18:00(会期中無休/入場無料)
会場=東北芸術工科大学7Fギャラリー
主催=東北芸術工科大学 企画・運営=東北芸術工科大学美術館大学構想室
協力=栃木県立美術館、西村画廊、赤々舎、田宮印刷株式会社、Apple Store Sendai Ichibancho
特別対談:『自分の顔に語る。他人の顔に聴く。』
舟越桂×酒井忠康(世田谷美術館館長/本学大学院教授)
10月12日[金]18:00ー20:00(開場:17:40)
本館201講義室(入場無料)