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▼日曜随想11月分

12月5日が私の最終回でした。
お読みくださった方、本当にありがとうございました。
明日、あらためて12月分をここにアップしたいと思います。

こちらは11月に掲載された日曜随想です。

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「家づくりを通して」

29歳からこの仕事でフリーランスになり、
40代に近づいた頃から人生後半のことが気になりだした。
3歳で先天性の病気が発症し、
「もしからしたら20歳までしか生きないのかも」
と心のどこかで思ってきた自分が、
あっという間に倍の年まで近づいてきて、
この先どうする?という問いかけが
潜在意識の中からわいてきたのかもしれない。

当時は仕事部屋と自宅を別々に賃貸していたので、
「家賃を払い続けるのなら買った方がいいのでは」
という友人たちのアドバイスや、
仕事とプライベートを
区別できない状況になってきたこともあり、
一ヵ所ですべて担える場所も欲しくなってきた。


女性の場合、どなたかの扶養家族になる
可能性もなくはないのだが、
どうにもそのイメージやときめきもわかず、
まずはマンションと中古物件を探し始めた。
けれど暮らし方にぴたりと合う場所と
間取りがなかなか見つからず、
新築案に切り替えることにしたのだが、
そこで迷ったのが環境負荷についてだ。

独身だから子どもに資産を残すわけでもなく、
ただ仕事と暮らしの効率をよくするために、
わざわざ自分専用の家を持つのはいかがなものか。
私が他界すれば、残った建物はただの巨大な粗大ゴミになる。
エコかエゴか。

しばらく悶々と悩んだ末、
「誰もがその人にしかない役割があり、
楽しみながらそれを全うするのが人間だとしたら、
自分の生活環境を整えたとしてもバチはあたらない(たぶん)」
という結論をだした。

そのかわり家づくりはできるだけ山形の自然に馴染む素材を選ぼう、
引っ越しのときのゴミの分別も丁寧にやろう、と心に決めて。


日頃から食べ物にかぎらず「地産地消おたく(?)」なので、
建築は地元の工務店さんに依頼。
構造材は県産を使いたいと話してみたところ、
所有している山の木がちょうどいい具合に乾燥しているからと、
なんと市内産の材木で作ってもらえることになった。

土地の購入も含めるとたくさんの予算はかけられない。
その工務店さんにとっては過去最小サイズの設計で、
壁はほぼ漆喰、天井と床は無垢材にしてもらう。
地鎮祭で供えるお菓子も、
県産の杉材にちなんだ名前のおせんべいを
地元メーカーから選ぶなど、
私なりの遊びも随所に取り入れながら、
初めての家づくりを満喫した。


着工と同時に住まいの整理も開始。
分別をテーマにしたものの、これがなかなか手強かった。
手帳1冊、整理箱1つとっても、
燃えるゴミや雑紙、雑貨品・小型廃家電類と
複合的な素材でできている。

かつてインタビューで使っていたカセットテープも
山ほど溜まっていて、
プラスチックのケースと埋め立てゴミのテープに延々と分けた。
これからは買うときにもっと注意して品物を選ばなければと、
改めて痛感。

たった一人の人間だけでも、
驚くほど多くの物質を所有して生きている。
不要になったからと地中に埋めてしまって大丈夫なのだろうか。
原子力発電から出る高レベル放射性廃棄物しかり、
私のゴミしかり、地球の地下はどうなっていくのだろう。
いろんなことが頭を巡る。


数年前、ある食の会に招かれて
長野県小諸市でお話する機会があった。
ここでは昭和54年頃から各家庭で
堆肥化用に生ゴミを分別して市が回収し、
さらにゴミを17分別して資源化しているというのだから、
声を上げて驚いた。
誤字だと思われてはいけないのでもう一度ひらがなで書くが、
「じゅうなな分別」である。
「混乱しませんか」と聞くと、
「慣れですね」と、実にさらりとした口調の答えが返ってきた。
なんてかっこいいのでしょう。

この10月で自分の家に住みはじめて丸4年。
物との付き合い方、生き方、環境のこと、
家づくりを通して得た気づきをもう一度振り返って、
大切に暮らしていきたいと思う。

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